ぬり絵な絵本「大丈夫」
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「私もこんな才能があればなぁ」
「えへへ ぼくの才能は今ひとつですよ」
「え?」
「ぼくより絵が上手い人はたくさんいるし、有名人なわけでもありません」
「そんな!こんなに素敵なのに!」
「ありがとうございます♪そう言われると照れますね♪」
カエルくんは嬉し恥ずかしそうに笑いました
「それでもあなたはとても楽しそうでうらやましいです 私にとっての憧れは手が届かないほど遠くにあります」
アヒルさんはさっき見たポスターを思い浮かべながら
自分の夢が消えていく感覚になりました
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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「こんにちは!」そこにはカエルの青年が立っていました
「あ、すいません(いつの間にか謝り癖がついてしまった)」
「いえいえ!ゆっくり見てやってください」
とても優しい笑顔でした
「このくじらとっても素敵です…」
カエルくんの不思議な安心感も合わさって心地がいい絵です
「ありがとうございます」
アヒルさんの心のこもった言葉にカエルくんは照れました
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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そのポスターの先に小さなお店が見えました
店内には絵が壁一面に飾られている
「お店?アトリエ?」
なんとなく入ってみるアヒルさん
すると目に飛び込んできた一枚の絵に惹かれました
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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隅っこを歩いていたから見つけられたのかもしれません
最近このオーディションのポスターがよく目に入る
〜集え!未来を創るボーカリスト〜
「華やかなステージ 憧れるなぁ。」
「(でもこんな私がキラキラした人生を送れるわけがない。)」
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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−時は遡って3年前−
飛べない鳥であることに笑われる日々
外に出ると冷たい視線を浴びる
歩道の壁側を存在を消すように歩くアヒルさん
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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なんと彼だけはキャンバスに戻らなかったのです
「君はとっても不思議だね」
「んー?ぼくはカエルくんと同じだよ」
「そうかなぁ?」
「そうそう、カエルくんもう寝ようよー ぼく眠たい」
「あはは ごめんね! でもナマケモノくんスペース取りすぎ」
「そんなことないさ」
「もーしょーがないなー」
「カエルくん…」
「なに?」
「おやすみ また明日」
「うん、また明日」
カエルくんとナマケモノくんの生活の幕が上がった
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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隣のおうちから聞こえる夕ご飯を作る音
風になびいて聞こえる木々の音
ゆったりとした時間が心地いい
ナマケモノくんが放つ雰囲気にカエルくんはとても癒されました
そして早くも1日が経とうとしています
ナマケモノくんは結局どんな使命を持って生まれてきたのか分からず終い
「君といるとなぜか落ち着く」
「ぼくがいれば安心、安心なのさ〜」
そして運命の瞬間が訪れます
時計の針が空の色をゆっくりと変えていく
…あれ?
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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部屋をキョロキョロ見渡しています
そして彼は「こんにちは!」と言いました
カエルくんはとてもびっくりしました!
自分の描いた絵と話したのは初めてだったからです
彼はどんな使命を持って生まれてきたのだろう?
「君は誰なの?」
彼は当たり前のように「ぼく?ぼくはぼくだよ!カエルくんに会いに来た!」
またまたびっくり!なぜカエルくんに会いにきたのでしょう?
「お腹すいた!ねぇご飯にしようよ!」
今までずっと一緒に過ごしてきたかのような話し方で彼は言いました
2人で少し遅めのお昼ご飯です
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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今日も絵を描く
さぁ何を描こう?
カエルくんはせっせと筆を走らせる
なんだかいつもと違った手応えだ
「とっても可愛く描けそう…でも…」
絵が完成したその時、
彼はキャンバスから解き放たれました
ぬり絵な絵本「大丈夫」
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ただ それは1日だけの命
役目を終えた絵たちは
まるでシンデレラのように
キャンバスの中に戻り
インクをこぼしたように
ぼやけて溶けていく